2020年 05月 11日
ラジオからは音楽が流れるアナウンサーやコメンテーターの口ぶりにはいま何が起きているかを言葉でしめそうとする態度が、ある
なまえをつけたい
表面には張り詰めたいらだちや、怒りがありその小さな波には例えようもない不安が揺らぎ
哀しみと、喪失感が風景に共鳴しようとする
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by umebayashi-gyoza
| 2020-05-11 13:04
| 風薫るー5月
2019年 06月 22日
久しぶりに、酔っ払ったあの夜
「あのねえ、私、好きな人がいるのー」
いるのー、と延ばした音の先まで
彼女は駆けて、そして駆けるのをやめて
だって酔いが回っちゃうからね
また少し、前を見て話を続けたね
ちょっと前までつきあってた男の
情けなくも、もろい話を聞いて
たった今聞いた新しい男との
のろけ話にチリチリして
また明日もへらへら笑って飲みに行ける
嫌になるくらい
そう思っていたから
せっかくつくった友達も
交わした連絡先だって
惜しげもなく捨ててしまった
数十年たって
花火の翌日の燃えかすみたいな思い出を
拾い集めるなんて、気がつかなくて
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by umebayashi-gyoza
| 2019-06-22 07:31
| 6月ー潤いの季節
2019年 06月 08日
もしも、あと1回だけ
誰かと「つきあう」ってチャンスをくれるなら
それはそうそう、ないとはわかっているけれど
もしも、万が一、ならば
6月の、雨降る夜更けのファミレスで
ガラスを叩く水滴を眺めながら
くだらない話で何時間も
笑い転げていられるような
そんな、「つきあう」がしたい
バカ話の中にこっそりと毒を忍ばせても
「ウソでした」っと、ニヤニヤできるような
人生の奥底に触れるほどの真実を吐露しても
なお、ヘラヘラっと
この際、カオなんて、どうでもいいから
カタチなんて、さしてこだわらないから
ただ、夜更けのファミレスで
雨がやむまで、バカ話で
生きてるんだか、死んでるんだか
そういうのも、もうどうでもよくなって
クツクツ笑って、時間を忘れたい
もしもあと1回だけ
「つきあう」ってチャンスが降ってわくなら
もしも、万が一の話
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by umebayashi-gyoza
| 2019-06-08 00:22
| 6月ー潤いの季節
2019年 03月 02日
小学校からおとなになるまで、住んでいたのはなにもかもが真新しい郊外の住宅地だった白い壁、真っ直ぐな道路、ピカピカのスーパーそれ以外に何もないそれが当たり前だったから
東京で暮らすようになってからふるい、ふるいものが、さらっぴんの新しいものと混在していることがおかしくて、悲しくて時にうとましかったりもした
新しい町だった郊外の住宅地は古くなり、草も木も伸びた真新しい公園ではしゃいでいた子どもはもういないモデルタウンと呼ばれた私の町はいまや高齢化と、人口減少と、ロストジェネレーションのモデルタウン
最先端の都会のなかで頑強な古さを守ることと時間とともにあっという間に寂しくなった郊外とそのどちらもが私の町となった今私は、いつもどこでもない場所に帰ろうとしている
ふるくてきたないものがあたらしくてきれいなものに変わることの悲しさ、おかしさ、くやしさを抱きしめては、力を抜いて
2019年 01月 19日
今朝、新聞で見た「帰還困難区域」という文字
関係ない人だというのにふと、ふうっと、ため息が伝いました
だれかの家に残された食器や、棚や、ドアの傷スーパーのビニール袋や、プラスチックの容器たちかつての、だれかの、生活の音が私の記憶と重なって
そうじゃない、私は帰れていないわけじゃないちゃんと片付けもした、あの日からの全てを紙切れ1枚、ええでも、ちゃんと出した印鑑もついた決め事も、もめごとも、終わった後悔や未練なら、何とか自分で、やるだろう
今ひとたび思うのはあの日の午後の、柔らかい日差しわたしが「日常」と呼んでいたあの場所、あの匂い、あの木立の傾き勝手な場所におかれたリモコンや小さなお気に入りのスペースの珈琲の香りわたしが「好き」と集めた物たち、影たち、光たち
まだ言っているの?そんなことまさか帰りたいんじゃないでしょう?そうじゃない わたしが日常と呼んでいたあの場所はたしかに不安や、恐怖や、劣等感のある場所だったそれでも、確かに、わたしの場所はあったどんなに小さく、些細なものでもだからこそ大切にしていた
わたしだけの、ものがたり「帰還困難区域」
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by umebayashi-gyoza
| 2019-01-19 14:29
| 冬
過ぎてゆく日々に。通りすがりに、一言。
by umeko