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水のある場所


ラジオからは音楽が流れる
アナウンサーやコメンテーターの
口ぶりには
いま何が起きているかを
言葉でしめそうとする
態度が、ある

なまえをつけたい

表面には張り詰めた
いらだちや、怒りがあり
その小さな波には
例えようもない不安が揺らぎ
哀しみと、喪失感が
風景に
共鳴しようとする
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40代

日々の出来事


# by umebayashi-gyoza | 2020-05-11 13:04 | 風薫るー5月

燃えかす

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久しぶりに、酔っ払ったあの夜

「あのねえ、私、好きな人がいるのー」

いるのー、と延ばした音の先まで

彼女は駆けて、そして駆けるのをやめて

だって酔いが回っちゃうからね

また少し、前を見て話を続けたね

ちょっと前までつきあってた男の

情けなくも、もろい話を聞いて

たった今聞いた新しい男との

のろけ話にチリチリして

また明日もへらへら笑って飲みに行ける

嫌になるくらい

そう思っていたから

せっかくつくった友達も

交わした連絡先だって

惜しげもなく捨ててしまった

数十年たって

花火の翌日の燃えかすみたいな思い出を

拾い集めるなんて、気がつかなくて





# by umebayashi-gyoza | 2019-06-22 07:31 | 6月ー潤いの季節

万が一の話

もしも、あと1回だけ
誰かと「つきあう」ってチャンスをくれるなら
それはそうそう、ないとはわかっているけれど
もしも、万が一、ならば

6月の、雨降る夜更けのファミレスで
ガラスを叩く水滴を眺めながら
くだらない話で何時間も
笑い転げていられるような
そんな、「つきあう」がしたい

バカ話の中にこっそりと毒を忍ばせても
「ウソでした」っと、ニヤニヤできるような
人生の奥底に触れるほどの真実を吐露しても
なお、ヘラヘラっと

この際、カオなんて、どうでもいいから
カタチなんて、さしてこだわらないから

ただ、夜更けのファミレスで
雨がやむまで、バカ話で
生きてるんだか、死んでるんだか
そういうのも、もうどうでもよくなって
クツクツ笑って、時間を忘れたい

もしもあと1回だけ
「つきあう」ってチャンスが降ってわくなら
もしも、万が一の話








# by umebayashi-gyoza | 2019-06-08 00:22 | 6月ー潤いの季節

ふるいものとあたらしいもの

小学校からおとなになるまで、住んでいたのは
なにもかもが真新しい郊外の住宅地だった
白い壁、真っ直ぐな道路、ピカピカのスーパー
それ以外に何もない
それが当たり前だったから

東京で暮らすようになってから
ふるい、ふるいものが、さらっぴんの新しいものと
混在していることがおかしくて、悲しくて
時にうとましかったりもした

新しい町だった郊外の住宅地は
古くなり、草も木も伸びた
真新しい公園ではしゃいでいた子どもはもういない
モデルタウンと呼ばれた私の町は
いまや高齢化と、人口減少と、ロストジェネレーションのモデルタウン

最先端の都会のなかで頑強な古さを守ることと
時間とともにあっという間に寂しくなった郊外と
そのどちらもが私の町となった今
私は、いつも
どこでもない場所に帰ろうとしている

ふるくてきたないものが
あたらしくてきれいなものに
変わることの
悲しさ、おかしさ、くやしさを
抱きしめては、力を抜いて





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# by umebayashi-gyoza | 2019-03-02 10:41 | 弥生-出会いの道、決別の朝

6文字の冬


今朝、新聞で見た
「帰還困難区域」という文字

関係ない人だというのに
ふと、ふうっと、ため息が伝いました

だれかの家に残された
食器や、棚や、ドアの傷
スーパーのビニール袋や、プラスチックの容器たち
かつての、だれかの、生活の音が
私の記憶と重なって

そうじゃない、私は帰れていないわけじゃない
ちゃんと
片付けもした、あの日からの全てを
紙切れ1枚、ええ
でも、ちゃんと出した
印鑑もついた
決め事も、もめごとも、終わった
後悔や未練なら、何とか自分で、やるだろう

今ひとたび思うのは
あの日の午後の、柔らかい日差し
わたしが「日常」と呼んでいた
あの場所、あの匂い、あの木立の傾き
勝手な場所におかれたリモコンや
小さなお気に入りのスペースの珈琲の香り
わたしが「好き」と集めた物たち、影たち、光たち

まだ言っているの?そんなこと
まさか帰りたいんじゃないでしょう?
そうじゃない わたしが日常と呼んでいた
あの場所は
たしかに不安や、恐怖や、劣等感のある場所だった
それでも、確かに、わたしの場所はあった
どんなに小さく、些細なものでも
だからこそ
大切にしていた

わたしだけの、ものがたり
「帰還困難区域」

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# by umebayashi-gyoza | 2019-01-19 14:29 |

過ぎてゆく日々に。通りすがりに、一言。


by umeko