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雨、ショッピングセンター、そして

ショピングセンターにいた
福島から来た君は
18時24分の特急で帰るよと
バスの出発時間を心配していた

花屋の紫陽花の
青を束にして、素敵な憂鬱を飾りたい
ゲーム機が置いてあるのは3階だ
製菓店のそばのカフェで
あの人は、誰と約束したの

いないはずの人に会える
ショッピングセンターの
木製の床は軋んで
天井が耐えられるかも心配だ
でも、もう少しここにいよう
この雨だし、それに
暖かく、懐かしい音楽

友達の後ろ姿を見かけて
借りっぱなしの
カセットテープのことを謝ろうと声を出しかけて
怒らせて口を聞いてもらえなくなったことを思い出し
忘れていたぎこちなさを、また味わう

誰かが誰かの大切な人を待ち
ほっとした笑顔で連れ立ってゆく
やっとだね、ずいぶんだね
そろそろここを、出なければ

定刻
バスは出発

隣同士に座れた幸運にはしゃぎ過ぎ
時間を気にして浮かない顔をする君の気持ちを
うっかり軽んじてしまったかもしれない
雨はいっこうに止む気配もない
スピードを上げ、しぶきを立てるバスが
あの橋を渡るころ見たのは濁流

もう少し一緒にいようよと
高速道路に入ったら言うつもりだった
# by umebayashi-gyoza | 2022-06-28 13:10 | 6月ー潤いの季節

誰かのことを只想うあなたのことを只想う

それだけで
世界は美しくなる

あなたがいる
世界の誰もが
狂おしく祝福されている

誰かのことを只想うあなたのことを只想う_e0159875_00375891.jpeg


# by umebayashi-gyoza | 2022-05-15 00:28 | 風薫るー5月

あなたの詩

あなたの詩
それは青空に描かれる飛行機雲
青い画用紙に
真っ直ぐに引かれる白い線

いつか空を飛ぶ
そして、行きたい場所へ

たくさんの言葉が紡がれて
満ちあふれる希望となる

あなたの詩が心を貫くのは
その道筋に
たくさんの悲しみがあったから



あなたの詩_e0159875_18193973.jpg


# by umebayashi-gyoza | 2022-05-14 18:17 | 風薫るー5月

冬のまま


すっぽりと
冬に覆われる
週末
お湯の沸くのを待ちながら
これからの用事
あれもしなきゃ
これもまだだ
こっちはどうする

ずっと昔の石油ストーブのにおい
オーバーコートの茶色い柄
若かったね
勝手だったね
もう少し
冬のままでいたい
かもしれない

冬のまま_e0159875_09353806.jpg

# by umebayashi-gyoza | 2022-02-19 09:39 | 如月ー春を待つ季節

ゆきの夜

降り出した雪は束の間
夢を見せる
もう会えない人が
不意に訪ねてきたみたい

どしたの
こんな時間に
ともかく入って
濡れた靴下
ストーブ、ほらこっち
あったまってきなよ

お湯がちんちん湧く間
何から話そうか
さまよって

ようやく緩んだ
後悔や、つまらない嫉妬
だってね、そうじゃなくてね
いつもね、いつかね
口から溢れる前に
時が経った
気がつくと夜半
もう帰るよ

雪はみぞれに
明日はバスも
定刻通り
走るでしょう
 
ゆきの夜_e0159875_00064379.jpg

# by umebayashi-gyoza | 2022-02-13 23:57

過ぎてゆく日々に。通りすがりに、一言。


by umeko