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誰が覚えているものか

あの家にいたころのことを
彼はすっかり忘れてしまって
今の新しい環境に生まれたときからいるような
得意気な顔をしている

それはそれで、よかったのだ、と思う。

うん、そう、よかったのだけれど
私と一緒に、離れた場所への思いを語る人は
いないのだな
あの景色を、同じ映画を見た人のように
話してくれる人はいない

いや、考えてみれば
彼にだって
覚えていないけれど、きっと
喪失感はあったはず
お気に入りの絵本も、テーブルも
通っていた保育園の先生にも
サヨナラを言えずにいたことの

あのまっさらな心が
そんな不条理を抱えていたら
生きていけないから
忘れたのだ
彼は
忘れることにしたのだ
忘れることが、彼の
幼いながらの抵抗かもしれない

今ごろは、吐く息も白くて
あの道の月はキーンと、凍っているのだろうね
そんなこと
誰が覚えているものか
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by umebayashi-gyoza | 2015-12-01 13:04 | 12月、師走 | Comments(0)

陽光

もう、あの家にはいないのだ
誰も、いなくなったのだ。

細く柔らかい、12月の陽の光や
冷たい朝の空気
夏草の生い茂る庭にも
紅葉の落ちる道にも

忙しくて、考えている間もありません
思い出なんて、たぐるより
前に進むので、精一杯
いつも笑って、そう言うことにしているけれど

行間に入り込む、寂しさを
誰とどう、分かち合うのか
ため息に潜む、切なさを
編み込むほどの毛糸もなくて

新しい冬が来て
気持ちは満杯

なのにふと隣を見ると
あのころの景色が待っている
食べかけのパンの袋が笑っている
鍋の中のスープもぬくもっている

日の当たる場所、聞こえますか
そこに私がいたこと、覚えていますか
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by umebayashi-gyoza | 2015-12-01 12:49 | 12月、師走 | Comments(0)

過ぎてゆく日々に。通りすがりに、一言。


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