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日暮れ

奪わないでください
と、祈る

一生懸命、暮らしているのです
と、ねんをおす



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# by umebayashi-gyoza | 2024-02-02 00:31

よしやの秘密

真新しいマンションが増えてきたこのまちで
わずかに残った古いモノ
ああ、あのぼろっちい空き家ね
頑固に過去にしがみつく
なんとも無様な姿を地域住民にさらしながら
はや数十年が経過した


隣の空き地のペンペン草が
サイカイハツダオマエモハヤクタチサレヨと叫ぶ
コイツガタチサラナイカラ
ドロウカクフクガススマナカッタ
いわれもない噂もあったそうだ
噂の出所たちも、三々五々
アノヨへ行ったりしたけどね

かつてはここいらのがきんちょを相手にしてた
文房具兼駄菓子屋だったのだろう
「よしや」
ひらがなで大きく書かれた看板の
電話番号の桁が足らない
そんな店が
うちの地元にもあった
いつのことだったろう
ノートもスーパー消しゴムも買った
飴やらガムやら、スルメやら
当たった、無くした、ケンカだ、泣くな、ぶったぞ、けったぞ、やりかえせ、ばかやろう、くだらない、それ、なんだ、おとしちゃった、しかたない、そうぞうしい、ぼくじゃない、うそじゃない、ごじだ、もうかえるよ、ほら大事なもんだよ、一円だってね、なくしちゃだめだ、鐘がなったよ、おやどうした、またおいで、送って、送られて、手を振って、やれやれ

ベビーブームから少子化に流れは変わり
10円20円の当たりくじつき駄菓子に寄りつく子どもらも
だんだんと少なくなっていったのか 
なにかと気難しい店主であったか
それとも何かのっぴきならぬ事情があったのか 
体は正直に異変を知らせる
ほんの少しの間の不在のつもり
すぐにまた開けるつもりであったろう、そのまま

置きっぱなしのノートや
帳簿類を掘り出せば
すべてが明白になるだろうか
店主にある日、何が起こり 
なぜ、この店が閉じられたのか

ガキどもは
何度も店の前を通った
いつか10円駄菓子より
魅力的なものにも数多く出会い
反抗期を通り、受験を抜け
なんだかんだと走りすぎ
それでもまだ
明日の開店を
待った

よしやはいつも
あるもんだと

どこかに必ず
理由があり、約束があり
不実で隠された符号を組み合わせ
誰が、何を、紐解くか
そこから、何が出てくるか

五月
ぐるりと囲む木々たちが
秘密は秘密のまま
守るように
寄り添うように
そよそよ 風に ゆれている
# by umebayashi-gyoza | 2023-05-27 09:45 | 風薫るー5月

ある日そうつぶやいた

財布にあと幾らある
玉子は買った
ネギもある
あとどれだけ働けばいい
むかつくことばかりだ
謝ることばかりだ
気を遣うんだ
疲れるんだ
理屈じゃない
気持がいいなあ
こんな日は
おかねじゃ買えない
光と影の織りなす
壁のアートは
ある日そうつぶやいた_e0159875_11345589.jpg

# by umebayashi-gyoza | 2022-09-03 11:40 | 9月-夏から秋へ

うそ

あのひとは何度もうそをついた
うそをつかないで
ほんとうのことを言って
ことばを尽くし
よびかけるひとびとを前に
かれは
これが、ほんとうのことなのだよと
うそつきらしい
うそをついた

わたしはそれが
つらかった
うそ_e0159875_10155461.jpg


# by umebayashi-gyoza | 2022-09-03 10:21 | 9月-夏から秋へ

居酒屋あらわる

商店で見た山崎パンの
バターケーキが豪華に見えた
電話ボックスに置かれた缶コーラに
毒が入っていたニュースが怖かった
ユリゲラーがスプーンを曲げたかと思うと
あのカルト教団の教組が宙に浮いていた
睡眠学習のテープで成績が上がるらしい
そういうガチャガチャのなかで
なんとなく勉強しないまま
8月が過ぎた

30年、40年なんてあっというまだ
あの八百屋も、隣の肉屋も、この町を出た
明日もまたシャッターをあけるだろうと
なめてかかっていた間にだ
意地悪だと評判だった薬局もやめた
大家さんだった商店は
コンビニにはならないまま
3年前に閉じた
夢のスペースだったビル
ぼろぼろになった屋根とベランダ
あんがい、小さかったな
ああ、年をとったんだ
地元に帰るたび
そう、感じさせられるあの場所

だが今年、あの場所に異変が
薬屋の空き店舗が
なんと居酒屋になっている

もうけ度外視ってやつなのか
社会貢献の一環か
地域おこしか
はたまたナニか

よくわからない
よくわからないけど
居酒屋あらわる

道路の向こうから、そっと居酒屋を覗くと
まだ開店前らしき、その奥で
夫婦とおぼしき男女が店をこしらえている
いぶかしげに覗いているこちらに
妻らしき女性が気づく
あ、気づかれたと
やり場なく、やや会釈
妻らしき女性も
こくんと、会釈
やばい呼ばれる
彼らはもしや
幻を見せるキツネかも
行ってはだめだ、いかんいかん
慌ててその場を立ち去る

しかしそれは
幻ではなさそう

居酒屋あらわる
消えるな居酒屋

居酒屋あらわる_e0159875_22022362.jpeg


自由詩 居酒屋あらわる Copyright うめバア 2022-08-20 00:13:03
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# by umebayashi-gyoza | 2022-09-02 22:07 | 9月-夏から秋へ

過ぎてゆく日々に。通りすがりに、一言。


by umeko